感想文

「糸/林民夫」を読んで

少し雑談

作品を読む前にテレビで紹介されたり、映画化になったりするととても悔しい気持ちになるCouです。(笑)結局読んでしまうんですがね。面白いんです。

 

糸|株式会社 幻冬舎

感想

歌手・中島みゆきさんの「糸」という名曲が題材となったこの小説。それだけで読む前からワクワクしていた。そして読み終わった時には、記憶に新しいある一つの映画を思い起こされた。

「君の名は」である。

設定やストーリーは全く違うものの、最後のシーンでの私の安堵感はかなり近いしいモノがあったように感じる。

そんな事を感じさせられたこの糸という小説の中で、いくつか考えさせられる事があった。

まず一つ目は我が子に対するネグレクトだ。

いわゆる虐待である。正直私がこの事に対して意見を残すには、経験や知識が圧倒的に不足している。その人の気持ちさえ考える事が困難であるため、かなり自分本位の主観的な意見となってしまう。

その為多くを語る事はやめておこうと思う。

そんな中でもひとつだけそのような人に問いたいのは、 「母親は自身の身体を痛め苦しみ

父親は愛する人の苦しむ前で何もできないと嘆き苦しむ。そんな中で誕生する命。

我が子すら愛せずして、誰を愛せるのだろうか?」

聞きたいのはその一点のみである。

このような事がネットに記載されている内容だと年々増加しているようだ。そんな事も考えず・経験もなくここまで来れたという事は恥ずべき事かもしれないが、両親への感謝が一番先にたった。それが当たり前ではないという事なのだ。

そしてこの作品で一番突き刺さった文章。

「誰かを守れる人間になりたい」という文章の解釈だ。

どのような人になりたいですか?と問われた時、多くの人が回答・想起した事があるであろう、尊敬される人間や、人を守れる人間という言葉。

私自身も当たり前のように守りたいなど言葉として発していた。この言葉を受ける人がどのような感情になり得るのかなど考えたことも無かったからだ。守ってあげたい・尊敬されたいという言葉の裏には、その人より優位な立場でいたい、下に見ていたいという願望が含まれていると感じる人もいる。

ハッとした。

何気なく言っていた言葉に性格が反映されている様に感じてしまった。「あなたは優位な立場から人を見下ろしていたいと思っている人なのですね」と。

私自信、上からものを言ってくる人は苦手である。そんな私が優位な立場に立ちたがっているというのは自分への落胆と驚きが生まれた。

 

また読んでいる際中ふと思い出したことがあった。

子供の頃に教育として言われてきた「やられたら嫌なことは人にしない」と言う言葉と、「やられたらやり返せ」と言う言葉。この二つの言葉が相対しているのだなと考えさせられた事もこの作品を通してであった。

更に、作中に出てきた「優しい言葉は時に人を傷つける」という言葉だ。

言葉は辞書に載っている無機質的な意味だけでなく、かける人・かけられる人の環境であったり、立場・性格など多くのの要素から総じて意味を成し伝わる。何でもないと思っている一声が時に相手を喜ばせ、時に傷つける。私は前者でありたいと願っている。

数学に数式の美しさがあるように、

文学には言葉の美しさがある。

素敵に言葉を使っていきたいものだ!

 

あとがき

はじめに記載した通り、この作品は中島みゆきさんの「糸」が題材となっています。その為、作中の時々に糸の歌詞が書かれ流れています。

改めて素敵だなと胸を打った歌詞は

「どこにいたの 生きてきたの 遠い空の下 ふたつの物語」でした。

作中にこの歌詞が出た時、中島みゆきさんは「糸」を作る際このような情景が浮かんでいたのかな?と心が温まり、感動を覚えました。皆さんも是非読んでどんな「ふたつの物語」があったのか確認してみて下さい!

「糸」がより一層好きになるのではないかと思っています。