エッセイ

世界30言語で翻訳されている作品「自閉症の僕が跳びはねる理由/東田直樹」を読んでの感想

自閉症の僕が跳びはねる理由

職場で最近話題になっていたこの作品。2021年4月2日に映画化され、見に行きたいと先輩方が話していた。そこで気になり始めすぐに電子書籍で購入し読んでみた。

職業柄、自閉症の子ども達と接する機会も多くとても気になるタイトルであった。今までなぜ存在を知らなかったのだろうという程、映画になっていたり、世界各国で翻訳されていたりと多くの人に読まれている作品であることを知った。

今回のこの作品は読まなければならない作品だと私は思い、読み始めた。

文庫本

201円〜

kindle版

444円

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〜こんな人におすすめ〜

  •  自閉症の人との関わりが深い方へ
  •  自閉症を持つ人がどのような感情でどのような行動を取るのか知りたい人へ
  •  自閉症について何も知らない方へ

今現在では「自閉スペクトラム症(ASD)」と聞くことが多いのでは無いだろうか。しかし、今回は作品に合わせ自閉症と明記しようと思う。

自閉症を持つ人との関わりが深い方は必ず読んでいただきたい作品だ。なぜそのような行動を取るのか理解できないという方にもこの作品は読むべきであると思う。

この作品は自閉症である作者の声である。注意点として、この作品に明記されている内容が全て他の自閉症を持つ方に適応されるとは考えない方が良い。しかし、1つの指標にはなる。このように考えている可能性があるなという予測ができるようになるのだ。

そのため、自閉症を持つ方と近しい人には是非読んでいただきたい作品なのだ。

また自閉症を持つ方と接点がないという方にも私は読んでいただきたい。接点がないと言うことは実際にその人と出会った時、この作品を読んでいないあなたは読んだことのある人とは違った目線になるだろう

知らないと言うことは恐怖感を与え、避ける方法しか取れないのである。どうか自閉症について知らない人にも一読していただきたい作品である。

〜作品の概要〜

作品名:自閉症の僕が跳びはねる理由
著者:東田直樹
出版社:KADOKAWA
発売日:2016年6月17日
ページ数:132ページ
○読み終えた時間:4時間程

〜著者について〜

東田 直樹

1992年千葉県生まれ。

会話の出来ない重度の自閉症でありながら、パソコンおよび文字盤ポインティングにより、コミュニケーションが可能。

13歳の時に執筆した『自閉症の僕が跳びはねる理由』(エスコアール、角川文庫)で理解されにくかった自閉症の内面を平易な言葉で伝え、注目を浴びる。 同作は翻訳され、2013年に「The Reason I Jump」が刊行。現在30カ国以上で翻訳、世界的ベストセラーに。

著者に『自閉症の僕が跳びはねる理由2』『ありがとうは僕の耳にこだまする』『あるがままに自閉症です』『跳びはねる思考』『自閉症の僕の七転び八起き』『自閉症のうた』など著書多数。

引用:東田直樹オフィシャルサイト

〜大まかな概要〜

自閉症によくみられる症状を「なぜこのようなことをするのですか?」という見出しのタイトルにし、それに対して自閉症を持つ作者「東田直樹さん」が彼なりに答えるという形式の作品となっている。

多くの項に別れその答えもほとんどが1ページ半ほどで書かれているため、読み疲れもなく多くの人が読める作品なのでは無いかと思う

そして最後には彼が伝えたい想いを小説のストーリーとして伝えてくれている。この小説も見どころだ。

〜目次〜

 はじめに

第1章 言葉について 口から出てくる不思議な音

第2章 対人関係について コミュニケーションとりたいけれど…

第3章 感覚の違いについて ちょっと不思議な感じ方。何が違うの?

第4章 興味・関心について 好き嫌いってあるのかな?

第5章 活動について どうしてそんなことするの?

短編小説 側にいるから

文庫版あとがき

解説にかえて

第1章〜第5章までで58もの見出しがある。ここでは大きな部分のみ取り上げている。

 〜感想〜

 この作品のここがすごい!

  •  自閉症を持つ人に対する「なぜ?」が、自閉症を持つ作者によって答えられていることで、自閉症を持つ人の思考を考える上での参考となる

特に私は自閉症の子ども達と接する機会が多い為、大いにこの作品は参考になった。やはり自閉症を持った人と関わるにあたって最も大きな障壁は「何を考え、何をしたいか分からない」という部分だ。

そのような疑問に対してもひとつの思考を彼がこの作品を通して教えてくれた。

他にもなぜこのような行動を取るのだろう?という事やなぜパニックになるのかなど、自閉症について知らない人にも分かりやすく答えられている

 印象に残った言葉

小さい子にいうような言葉使いの方がわかりやすいですか?

という質問に対しての答えがとても印象に残った。

赤ちゃん扱いされるたびに、みじめな気持ちになり、僕たちには永遠に未来は訪れないような気がします。
本当の優しさというのは、相手の自尊心を傷つけない事だと思うのです。

この言葉私には最も刺さった言葉であった。

この小さい子のような言葉使いの方がわかりやすいのではないかという想いも理解ができる。

これは自分の言葉がもしかしたら理解できていないのではないか?という不安と小さい子にいうような言葉の方が分かりやすいのではないかという想いがあるのだろうと思う。

しかし、結果的にその気遣いは相手を傷つけるという結果となっている。

なぜこのような事が起こるのか?

それはやはりコミュニケーションの難しさであろう。

自閉症を持つ方の多くは自分の思考や、とりたい行動・なぜその行動をとるのかと言う事をうまく伝えられないケースが多い。もしくは言語化が難しいといった事が多い

そのため、彼らがどれほどの能力があり、どれほどの話を理解できるのかという判断が難しい。

だからこそ話をかける立場としては「自分の言葉がうまく伝わっていないのでは無いか?」という不安からこのような対応をするという流れなのだと思う。

しかし、それは人によってその人の自尊心を傷つけてしまうというこの言葉は、私の意識に刺さった言葉となった

〜最後に〜

この作品私の中で多くの学びのある作品であった。自閉症を持つ方がどのような思考をしているのか、また行動しているのかというのはなかなか対面してそれを知る事ができない。だからこそ貴重な作品であり、30言語以上で翻訳されているのだろう。

現代の日本の作家では村上春樹についで広く翻訳されている作家であるそうだ

この作品は本当に多くの人に読んでほしい作品だ。専門的知識もいらずに読める

そのため、自閉症を持つ人の近くにいる人に限らず、何も知らないという人も世の中にはこのような苦しみを抱えている人がいるということを知ってほしい。

知るだけであなたの考え方は変わり、1つ優しくなれると思います

是非一読ください。