愛するということ
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〜今回の記事要約〜
社会心理学や、精神分析、哲学の研究者である「エーリッヒ・フロム」著の「愛するということ」はどのようなことなのかという事が記された書籍である。
ここには恋愛に限らず友愛、母性愛、自己愛、神への愛が「愛の対象」として語られている。
ここで皆に勘違いしてほしくない部分として、この書は
「愛される」ためにどうのようにすれば良いかという部分が書かれているわけではなく
主題である「愛する」ためにはどのようにすれば良いかが綴られている書籍である。
そのため今回のおすすめには「愛することを真剣に考察・議論できる書籍を読みたい方」「本当の愛とは」ということを考えたい方と挙げさせて頂いた。このような人には是非読んでいただきたい書籍である。少し難解ながらも読めない程の難易度ではないこの書は、きっとあなたに新しい価値観をもたらしてくれると考えている。
また、印象に残った言葉には男女平等にまつわる言葉を挙げさせて頂いた。ここにおいては私もとても心に引っかかった部分があったためであった。この書籍を読んで、私が感じていた違和感という部分を言語化し表現されていた。そういうことか!と納得した言葉であった。
そして考えさせられたことは「性欲と愛」の関係性だ。本当の恋愛とは?と考える際にどうしても私の思考のなかは「性欲」という部分が邪魔であった。それは、この書に書かれている「性欲の性質」を見て納得した。これによって私の恋愛についてのひとつの思考は前に進んだように思う。その言葉も後半に記載している。
そんな「愛」についてとても深く考え込まれた良書である。
著者について
エーリヒ・ゼーリマン・フロム(Erich Seligmann Fromm、1900年3月23日〜1980年3月18日)
ドイツの社会心理学、精神分析、哲学の研究者である。ユダヤ系。マルクス主義とジームクント・フロイトの精神分析を社会的性格論で結び付けた。
引用:wikipedia
〜はじめに〜
「ダ・ヴィンチストア」にて購入した最後の書籍。まさか哲学書だとは思っていなかった。一番奥の棚で美しい真っ白な表紙に書かれた「愛するということ」。一目惚れというものに近い感覚であっただろう。この作品を読みたいと思って購入した書籍である。
持つだけでテンションの上がるそんな書籍だ。
〜こんな人におすすめ〜
- 愛することを真剣に考察・議論できる書籍を読みたい方
- 「本当の愛とは?」ということを考えたい方
この作品興味のない人には堅苦しく最後まで読めないという方もいるかもしれない。私自身は初めての哲学書であったが、楽しく読めた。特にこの書は優しく書いてくれているのだと思う。しかし、宗教が絡む話の際は宗教の勉強が不足しているため読みづらかった部分もあった。
それを踏まえた上でも私にとってはかなりの良書であった。最近私が思っていた違和感も少しスッキリした部分があり、読んで良かった。そう思わされた作品であった。
〜作品の概要〜
○著者:エーリッヒ・フロム
○出版社:紀伊国屋書店
○発売日:2020年8月28日
○ページ数:212ページ
○読み終えた時間:6時間程
目次
第1章 愛は技術か
第2章 愛の理論
- 愛、それは人間の実在の問題にたいする答え
- 親子の愛
- 愛の対象
a, 友愛
b,母性愛
c,恋愛
d,自己愛
e,神への愛
第3章 愛と現代西洋社会におけるその崩壊
第4章 愛の修練
〜大まかな概要〜
タイトル通り大まかにいうと「愛するということ」とはどのような事なのかという事が記された書籍である。
この書籍は「愛は技術である」という前提で話は進められる。そのため「はじめに」にて、このように記載が見られる。
愛は「その人がどれくらい成熟しているかとは無関係に、
誰もが簡単に浸れる感情」ではない
人を愛するためには技術である以上、全力で学ばなければならず、そうしなければ決してうまくはいかないという主張である。
それを踏まえた上で恋愛に限らず、友愛や母性愛などが語られている書籍である。
〜感想〜
この作品のここがすごい!
多くの人が考える輪郭のぼけた愛するではなくハッキリとした愛するとはどういう事なのか1つの考えを教えてくれる。
最初からこの作品には驚かされる。
愛は技術なのか?それとも快感の一種なのか?という事が問われる。
もし技術だとしたら。努力と知力が必要だ。快感の一種であれば
それは経験できるかは運の問題で、運が良ければそこに「落ちる」ようなものだろうか。
と記され著者は前者であると明確に立場を表明している。その上で多くの人は後者を信じている。という流れで記される。
これもひとつの私にとって腑に落ちなかった点であった。
現代では「恋に落ちる」という言葉が使われ、その恋愛こそ本当の愛だという風潮がある。これは過去の結婚観とは全く違ったものとなっている。19世紀の愛というものは今のような「自発的で個人的な体験」ではなく、親や仲人によってまとめられるものであった。その時の考えは愛とは結婚して初めて生まれるものだと考えられていたという。
今現代の恋愛というものは先ほど記した「自発的で個人的な体験」であり、自由な愛という考え方が浸透したため、
「能力」よりも「対象」の重要性が重視されるようになったと著者は考えていた。
とても納得させられた言葉である。人々も何かその部分に感じていることはあるのであろう。皆はこんなことを友人などに聞いたことはないだろうか?
「付き合う人と結婚する人は違う」と…
皆どこか結婚には安定を求め、恋にはドキドキを求めているように感じる。
この言葉にはそんな心理が働いていたのではないかと思った。皆も何か違うことをぼんやりと認識しているように思う。
印象に残った言葉
これが最も私の疑問に思っていたことを言葉として理解させてくれた言葉だ。
男女が平等なのは男女に違いがないからだ、という思い込みが生まれた。
この言葉が最近とても引っかかっていた部分を解決してくれた。現代の平等が意図するものは同じようにというよりも、全て同じでなければならないという考えに近いように思える。これではロボットと同じである。
男女平等として男も女も同等に扱われるという意見に対してはとても素晴らしいものであると思う。しかし、ひとつ昨今の男女平等を謳う活動においては男女の違いという根本的な部分を忘れているように感じる。この作品に記されている言葉を借りると、
「平等思考の肯定的側面ばかりに目を奪われてはいけないということだ」
人として魂は皆平等であると思う。それは魂に性別はないためである。私も男女の魂、人としての平等は確保されるべきであると考えている。しかしながら男女においては生物学的な違いがある。今現在の男女平等は
「両極的存在としての平等ではなく、同一になってしまった」
とこの書籍は言う。
納得した。男女平等という考えは素晴らしい考えであるのだと思う。女性の権利というものも今後勉強しなければならないであろう。でなければこの話題には乗れないように思える。最近では「フェミニスト」の話題がよく取り上げられているものがあるが、男女両方ともに言われた言葉に対して熱く感情的になりすぎてあまりにも見ていられない。
そのため女性のみで意見しあったものの方が「フェミニスト」がなんなのかというものを知るには良いのかもしれないと最近思った。またそのような書籍を読もうと思う。
考えさせられた事
もうひとつ私にとって大きな課題、大きなひっかかりがあった。それは性愛と恋愛の違いであった。その部分においてもこの書籍の説明で腑に落ちた。
恋愛はしばしば、恋に「落ちる」とう劇的な体験と混同される。
これは性欲の性質に大きく関わっている。
もちろん愛によって性欲が掻き立てられることもあるが、
孤独の不安や、征服したい征服されたいとう願望や虚栄心や、傷つけたいという願望や、ときにはが相手を破滅させたいという願望によって掻き立てられる。性欲はどんな激しい感情とも容易に結びつき、どんなに激しい感情によっても掻き立てられる。
と綴られさらに
性欲にとっては、愛はそうした激しい感情のひとつにすぎない。多くの人は性欲を愛と結びつけて考えているので、ふたりの人間が肉体的に求めあうときは愛し合っているのだと誤解している。
この言葉に私はハッとした。恋愛とはなんなのかという部分に強く響いた言葉であった。
これは私の最近疑問であったのだ。恋愛を考えるにあたって性欲というものがうっとおしく感じる時があった。それは自分の心が愛によって動かされているのか性欲によって動かされているのかという疑問が生じるからだ。それは性欲の性質であり、愛することと性欲は混ぜてはいけないのだという視点を持つことで、本当に愛するとはなんなのだろうと少し考えやすくなった。
これは私にとってもひとつの進歩であるように思える。
最後に
この作品には多くのことを教えてもらった。しかしながら数時間で全てを学ぶことは難しい。私がこれまでこのblog内に書いてきたものはこの書籍のの1%未満なのではないだろうか。それほど学び多い書籍である。
また哲学の面白さも少し理解できたように思える。哲学においては正解がない分野と言われているが、その人の考える答えはこれだという形を提示してくれている。もちろんそこに納得いかない答えの提示もあるであろう。それを踏まえた上で考えさせてくれる分野である。
ひとつ「こう考えた」というその人のものの見方を提示することで賛成、反対という議論が生まれる。人はこのように成長してきたのであろうなと感心した。
とても興味深いお話「愛するとは」
きっと哲学を記している書としてはとても簡単に記してくれているのだと思う。何も知らない私でさえ一様読めてしまったのだから。ひとつ残念であったのは私が宗教や聖書のことについて知らなすぎるため、「神への愛」での項では、理解が追いつかず苦しんだ。
やはり海外の書籍を読むにあたってはここは切っても切り離せないお話なのだと思わされた。そのため今後勉強してゆこうと思う。
何もわからない私でさえ苦労した部分もありますが読み切れました。「愛するということ」を知りたい、考えたいと思う方々は読むべき一冊である。
その対象は結婚した人や恋愛している人、愛について考えたい人と幅は広い。皆孤独から解放を望み、愛に飢えている。この作品はそんな人にとって良書である。
左:単行本版 右:kindle版