感想文

「リジェクション〜心臓と死体と時速200km〜/佐藤まどか」を読んでの感想

リジェクション〜心臓と死体と時速200km〜

 

〜ひとこと〜

「あなたは誰の意思で動いていますか?」

〜はじめに〜

久しぶりに読書を挫折しそうになっていた。全く頭に内容が入ってこず、眠くなるばかりであった。そのため気分転換に読もうと思いkindleにておもむろに本を探そうと思った。そこで”佐藤まどかさん”を検索欄に打ち込み探してみることにした。そこで見つけたのがこの作品。

すぐに読み始めていた。

単行本版

kindle版

amazon kindle unlimite

〜こんな人におすすめ〜

  • 読書は眠くなるからできないという方
  • 自分が誰の意思で動いているのか?という疑問を持ったことがある方。
  • 感情のままに泣きたい方

〜作品の概要〜

作品名:リジェクション 心臓と死体と時速200km
著者:佐藤まどか
出版社:講談社
発売日:2016年11月1日
ページ数:205ページ
○読み終えた時間:4時間弱

著者について

思っていた以上にすごい方、というのもあるが特にグローバルな方で驚いた。

イタリア在住の日本人ライター、作家さん。本籍は東京であるが、現住所がイタリア。

1990年にミラノでデザインスタジオ「etazoo」を開設

⇨医療器具、時計、家具、内装などのデザインを手がける

その後は世界中の40誌、デザイン関連の書籍などが紹介。

1992年以降はイタリアを中心に日本でも展示会を開いている。

 

作家としては

2006年、第22回ニッサン童話と絵本グランプリ童話部門大賞受賞し作家デビュー。

以後主に、児童文学・YA作家として活動している。

最も最近では、前にBLOGde紹介させて頂いた「アドリブ」は2020年に第60回日本児童文学者協会賞を受賞している。

前の記事はこちら⇨アドリブ

※引用:wikipedia

大まかな概要

ネイルガン(電動釘打ち機)を事故により、心臓に打ち込んだ主人公。

運良く心臓移植の適合するドナーがすぐに見つかり、移植した。その甲斐もあって命を取り留めたが、彼女にその後変化が起きた。

いわゆるドナーの心臓に細胞記憶としての記憶が残っており、彼女の好みや意欲に変化を受けているのではないかという話であった。

そんな主人公が心臓移植をしてから、バイクをスピードいっぱい飛ばして走りたいと願うようになる。

その夢を叶えるドライブで多くの出会いと問題があった。

このような物語である。

目次

プロローグ

  1. ネイルガン
  2. まわりとの関係
  3. 少年と高速道路
  4. 濃霧の層
  5. ルカ
  6. 巻き込まれた事件
  7. 形式だけの納棺式
  8. 事情聴取
  9. 真実を探る役目
  10. 本能と理性
  11. サンドイッチとキス
  12. 消えない疑惑
  13. 解放されて
  14. マシュマロ
  15. よみがえる疑惑
  16. 本物のキス
  17. きっかけ
  18. 十七歳
  19. 時速二百キロメートル

とても細かく分かりやすい目次である。そこに書かれている内容ががこの目次の的確な数文字で表されている。

これは児童書を書いているからだろうか?とても読み手に優しく、寄り添ってくれているように感じる

 感想

 この作品のここがすごい!

 心臓移植した彼女に流れてくる記憶

この作品の肝となっているのは主人公の女性が事故により心臓を移植した事で、ドナーである少年の記憶が細胞記憶として残っており、彼女の中に彼がいるという部分であろう。

この彼の記憶が彼女に多きな影響を与えていた。移植後最初の変化に食の好みが変わり、その後気性が激しくなったり、歩き方も変化していた。

これだけの変化が起こっているのだから彼女にとって良い変化となった部分もあるが、同時に悩みの種にもなっていたということだ。

特に彼女の中に少年がいると意識すればする程、自分の行動が自分の選択なのか彼の選択なのかと主人公はわからなくなっていた場面があった。これは心臓移植した人に関わらず、他人の目が気になって自分を息苦しくしてしまう人にも当てはまるのではないだろうかと思う。私はそのような視点で読んでいた。

少なからず人の目が気になる人はそのような想いを持った事があるのではないだろうか。

この作品の主人公は、「ルカ」との出会いでその迷いを少しづつ克服していったように思える。この作品のひとつの見どころであろうと思う。

 印象に残ったシーン

母と娘、17年越しの…

久しぶりに涙で瞳を濡らすこととなったこのシーン。その時は突然やってきた。

そのシーンが予測できなかった訳ではない。なぜならそこに行き着くまでに主人公の彼女の想いと母の想いは、交差しているのだと理解できるシーンがある。

ここで私の胸を撃ったのはきっと、

母の最初の反応とその後娘にかける言葉であったのだと思う。お互いに本当の気持ちを表にうまく出せず、きっと辛かったのだと思う。正直になれればと思っていたのだと思う。この想いがすべて母の行動と言葉に魂としてが乗っかっていた。そこに私の感情は急激に揺さぶられたのだと思う。

危なかった…

 最後に

印象に残ったシーンの最後に危なかったと書いたが、このシーンを読んでいたのがバスの中だった。危なく普通に泣いてしまうところであった。(笑)本当に久しぶりに本を読んでいて泣きそうになったこの作品。

この感想文を書きながら少し読み直しても、ウルっとくる場面だ。

この本に出会えたこと、読めたことによって、ひとつは読書をまた再開できる気持ちができたこと、そしてこの感情の動きがあるから読書はやめられない、楽しいという事を再認識させてくれた作品であった。

また改めて今後も、多くの本と出会っていきたいと思わせてくれたそんな作品であった。

誰にでもおすすめできる作品です!

               kindle             単行本