感想文

あなたの人生と仕事の価値観を変えてくれる「お探し物は図書室まで/青山美智子」を読んでの感想

お探し物は図書室まで

 

〜はじめに〜

本屋大賞第2位に選ばれたこの作品。
全国書店員さんが選んだ多くの書籍の中から選ばれた第2位の作品には昨日紹介した「52ヘルツのクジラたち」とは大きく違う雰囲気を持った作品であった。

本屋大賞の1位「52ヘルツのクジラ」、2位「お探し物は図書室まで」、9位「推し、燃ゆ」を読んで思ったこととして、この多くの作品の中からノミネートされたこれらの物語に順位をつける作業を考えただけでも難儀だなと思った。書店員さんの方々も心苦しかったでしょう。お疲れ様です。

そしてこの2位をとった「お探し物は図書室まで」多くの人の心を動かした作品であろう。書店員さんがこの本を多くの人に読んでほしいという理由もとても納得がいく内容であった。

単行本版

1,760

kindle版

1,408

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〜目次〜

  1. 一章 朋香 二十一歳 婦人服販売
  2. 二章 諒  三十五歳 家具メーカー経理部
  3. 三章 夏美 四十歳  元雑誌編集者
  4. 四章 浩弥 三十歳  ニート
  5. 五章 正雄 六十五歳 定年退職

少し変わった目次だと初見で思った。名前・年齢・職業が書かれたこの目次。ここでわかる事としては老若男女の働く人々のお話なのかなという事が想像できるといったところであろうか?

目次のみでは、この作品の話は読み取れない形となっているようだ。

〜こんな人におすすめ〜

  • 自分の仕事に自身が持てない人へ
  • やりたい事に1歩が踏み出せない人へ
  • 人生うまくいかないと嘆いている人へ
  • 夢を1度諦めた人へ
  • 人生の過ごし方に悩んでいる人へ

上記したおすすめは目次1つ1つのテーマといっても良いだろう。

この作品は仕事をしている人や、やりたい事に1歩が踏み出せなかったり、諦めてしまった人。そして自分の社会的立場が消えてしまったと思っている人。どの章にも過去の自分現在の自分未来の自分が投影できてしまう。いわゆるどの章にも自分がいる。そんな作品となっている。

そのため先程のおすすめには悩みや不満といったことを多く列挙しているが、現在の仕事に満足いっている人が読んだとしても、自分の仕事に対する考えと共感できる部分やそんな考えがあったのかと新たな発見にも役立つのではないだろうか。

今仕事をしている全ての人に「前を向いて歩く」元気を与える作品である。

そのため大きな括りでのおすすめは「仕事をしている人と夢を持つ人」であろう。

〜作品の概要〜

作品名:お探し物は図書室まで
著者:青山美智子
出版社:ポプラ社
発売日:2020年11月11日
ページ数:300ページ
○読み終えた時間:4時間程

著者について

 青山美智子(あおやま みちこ、1970年6月9日)
⇨日本の著作家。

大学卒業後、オーストラリアに渡る。シドニーの日経新聞社で記者として2年勤務ののち、上京。雑誌編集者を経て、執筆活動に入る。

2017年8月、単行本『木曜日にはココアを』(宝島社)で小説家デビュー。

引用:wikipedia

”青山美智子さん”の作品も今回の「探し物は図書室まで」が初である。この方のこの作品もまた他の著者の方々と比較すると、情を動かされるというよりも、

「顔と心を前へ向けてくれる」

そんな印象のある説得力のある言い回しをされる。この作品を読んでいる途中に思ったこととして、「自己啓発系の書籍を読んでいるようだな」という印象を受けた。それだけ彼女の紡ぐ言葉は、人のあと一歩届かない行動力を後押ししてくれるような、背中を押してくれるような優しさと勇気のこもった言霊がこの作品に私は感じられた。

ひとつ違うのは自己啓発系の書籍と違い、物語がしっかりしており、堅苦しくない。しっかりとした文学作品である。

大まかな概要

第一章〜第五章までそれぞれ目次に記されている通り、主人公が違う。その幅は21歳新入社員の女性〜定年退職を迎えた65歳男性という老若男女の人生や仕事姿が映し出されている。

そんな中大きな共通点として仕事が関係した悩みがある。という部分である。それぞれの年代で的確で多くの人が感じた事があるのではないかと思う悩みを抱えた主人公達が共通の図書館を訪れ、司書から本を紹介してもらい、彼・彼女らに変化が起きてくるといった内容である。

 感想

 この作品の見どころ!

  • 司書の不思議な雰囲気と説得力

※司書とは
⇨図書館法に定められる資格を有し、図書館まで図書の保存・管理・閲覧の事務を取り扱う職。

この作品中心的な人物となっている登場人物である。彼女にはなにか不思議な雰囲気がある。彼女には、なぜその人が悩んでいるのかという事が分かっているような本の選択をする。しかし、本のタイトルだけを見ると、なぜその人にオススメしたのか?その作品の何が彼らの悩みに添えると思ったのか?分からないのである。

しかし、そこには読書の楽しさの1つが記されていたように思える。

その作品からメッセージを受けとるのは読者であり、その受け取るメッセージは、人によって心に残る場面や、言葉が違ってくる。
そして、その記憶に残る部分は今現在の自分を大きく反映している言葉であるだろう。

何があなたの人生を変える、もしくは豊かにしてくれる作品かは、あなた自身が読み、感じたままにその作品を受け止めるといいと思います。それは間違いではなく、あなたに必要であった言葉なのだから。

 印象に残った言葉

ここで紹介するのは私の仕事に対する価値観を変えた言葉だ。

第一章の婦人服販売員がとても私の中で印象に残る言葉を綴っていた。

たいした仕事じゃない」なんてとんでもない間違いだった。
単に私が
「たいした仕事をしていない」だけなのだ。

この言葉は彼女が婦人服販売員という仕事にコンプレックスを持っており、そこでひとつの出来事でパートとして働いている人生の先輩の働きぶりを見た際の彼女の言葉である。

仕事に対してコンプレックスを持っている人もいるのではないだろうか?
このコンプレックスにも多くの種類があるように思える。

例えば、同じ職種であってもやりがいを失い、周囲と比べて仕事に対する熱意がない場合。
他にも、自分の仕事なんて誰でも変えがきくと思いながら働いている人など、他にも多くの悩みを抱えている人がいるであろう。

この「たいした仕事じゃない」という言葉がどれほど意識として愚かなものかというのを知らされた言葉であった。この言葉が当てはまる仕事などないのだと改めて知らされた。

しかし、確かに「職種」というのはその人を表す指標に社会がなっているように思える。そんな中この「たいした仕事をしていないだけ」という意識と行動力があれば、それは胸を張り自身を持って務められるのではないだろうか。

仕事として成り立っている以上、誰かの救いになっているのを忘れてはいけない。たいした仕事じゃない仕事など、ないのだと強く思わされた。

 考えさせられた事

この作品は一章一章ごとに考えさせられる事がある。

今回は少しこの作品の本題とは離れた部分を記載しようと思う。
今回考えさえられた事として、

「女性の産休後の仕事復帰についてである」

私自身の性別は男である為、育休をとる可能性はあるが子どもを産むために長期間のお休みを頂くという事は体の構造上ない。そのため、女性の産休後の仕事復帰については全く考えてこなかった。

キャリアを積みたい女性も多く共働きが当たり前の現代社会で、子どもの誕生が女性にとって喜ばしくもありながら、仕事においては重荷となってしまう部分が現代的な問題であろう。私は仕方のないことだと考えもせずにいた。

この作品においてもそのような悩みを持った女性が主人公の物語がある。

「男が働き、女性が家を守る」そんな昔話が今現在では通用せず、女性も社会に進出してキャリアを積みたい、なんとかして今の仕事が楽しいから続けたい。という人も年々増えてくるであろう。

企業も短時間勤務制度や育児休養制度が利用できるようになったりと多くの対策を試みているようである。また厚生労働省

「保育所等関連状況とりまとめ(令和2年4月1日)を公表します

引用:厚生労働省

によると、保育園なども3歳未満児の利用が増加してきている。

0歳児から保育園に預けるなんて可哀想という声も世間的にあるようだが、保育園を経験した私としては何が可哀想なのか理解ができない。この可哀想という知見を示している方の根拠を私は知りたいのである。これにおいては私の無知という可能性も高いためだ。

良い文献があれば教えていただけるとありがたい。勉強させていただきます。

このような状況から少しづつ改善の方向には向かっているようだ。

このような生命の誕生のために職ややりがいを失い心が折れてしまいそうな方にもこの作品の第三章を読んでいただきたい。私も少しづつ考えていこうと思う。

 最後に

考えさせられたことに関してはあえて本題とは離れた部分を書かせていただいた。
これは今お作品を手に取って是非読んでいただきたいという私の思いもある。

 

仕事をする全ての人。仕事に悩む全ての人。仕事に夢を持つ全ての人。
この作品はそのような人々の心の支えとなる作品だ。

全ての章に共感や発見があり、あなたを救ってくれるかもしれません本が読みたくなるかもしれません何か変化が起きるかもしれません
あなたを救ってくれるのはあなたの心を動かした言葉だと思います。

作品を最近多く読んできて思うことは、多くの著者の方々が、作品を通して読者に寄り添ってくれようとしてくれているように思えます。支えてくれようとしているように思えます。

この作品もその1つです。

是非読んでみてください。おすすめの作品です。

 

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