クスノキの番人
東野圭吾さんの作品は前々から気になっていた。そんな中、この本が欲しいとは決めずに向かった本屋さんにてこの作品を見つけた。
表紙を一目見た時、「この作品いいなぁ」と思い購入。
大きなクスノキの木がどかんと描かれ点々と、光と月が灯りを放っている。
力を感じる表紙であった。
それが東野圭吾さんを初めて読むこの作品との出会いだった。
単行本版(ハードカバー)
〜こんな人におすすめ〜
- 心温まる話を読みたい方。
- 先の将来に失望している方
この作品の物語は、私の感じた印象として、心温まる、休まるといった印象が強かった。それだけ穏やかな気持ちにさせられた。しかし、こう表現すると物語に感情を動かされるような起伏がなく、平坦な物語と勘違いされるかもしれないが、純粋な物語の面白さもある作品だ。
そのため、400ページ以上あるものの、最後まで読み切ることも苦ではなかった。
また、この作品の主人公は、特別な生い立ちということもあり、将来に失望している部分がある。そんな主人公にどんな変化が起こってゆくのか、読んでいて面白く、爽快感もあると思う。
〜作品の概要〜
○著者:東野圭吾
○出版社:実業之日本社
○発売日:2020年3月17日
○ページ数:456ページ
〜著者について〜
東野圭吾
1958年、大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木賞、第6回本格ミステリ大賞、12年『ナミネ雑貨店の奇蹟』で第7回中央公論文芸賞、13年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。近著に『魔力の胎動』『沈黙のパレード』『希望の糸』など、スノーボードをこよなく愛し、ゲレンデを舞台とした作品に『白銀ジャック』『疾走ロンド』『恋のゴンドラ』『雪煙チェイス』がある。
引用:クスノキの番人【著者略歴】
〜大まかな概要〜
あるクスノキの木に祈ると願いが叶うという噂のある木の番人として雇われた主人公。
彼は、窃盗という罪を犯し、逮捕されてしまった。両親は共に亡くなり、祖母にも助けられる力もツテもなかった。そんな時に助け舟を出してくれたのは伯母であった。ある条件をのむというのであれば、雇った弁護士を派遣し示談まで持っていってくれるということであった。
その条件というものが、「クスノキの番人をする」という条件であった。このクスノキの番人をすることにより、多くの人と出会い、主人公に変化が現れてくる。
そんな物語だ。
〜感想〜
この作品のここがすごい!
- 読んでいて飽きないストーリー展開
優しく、温かい物語というものは、少し変化が乏しく読み疲れてしまう作品が多いように私は思っていた。しかし、この作品は違った。
読んでいる最中に思ったこととしてなぜか読めてしまうであった。後から考えると「この先どうなるのだろう」という話の展開が幾重にも出てきていたように思える。
「この先どうなるのだろう?」という興味は話の続きを読むのに最も必要な欲求なのではないかと思う。
また読みやすさもこの作品の「飽きない」という部分に大きく繋がっている。小説を読んでいると「なぜこの場面に転換したのか?」というものや、「この話はなんのことを言っているのだ?」という分からない部分がある作品も多くある。
これもひとつの「考える」という読書の楽しみであるため、面白い点でもあるが、逆に分からないという部分が大きすぎるとフラストレーションが溜まり、ストレスや挫折といったことに繋がることも少なくはないだろう。
その点この作品においては、話の流れが途切れず、急激な場面転換もないため、純粋に物語を楽しめる形となっていた。
〜最後に〜
私の勝手な印象ではあるが、東野圭吾さんはミステリーのみを書いている作家さんなのだと思っていた。
高校時代はミステリー作品ばかりを読んでいた記憶があるのだが、最近では全く読まなくなってしまったため、ミステリーの印象が勝手に強かった東野圭吾さんの作品を読む機会もなかったのだ。
そん中読んだこの作品。読み終えた後「感動した」という感想が自然と湧き出てきた。
難しいことを考えず、小説の物語をただ純粋に楽しんだ作品も久しぶりだったかもしれない。作品が何を伝えたいかを知るという事も大事であると思うが、単純に物語が面白いという事も本を楽しむ大きな要因だ。
そんなことを改めて教えてもらえた作品となった。また引き続き東野圭吾さんの作品を見ていきたいと思う。
皆様も是非読んでみてください。