感想文

複雑な感情入り乱れる「こうふく みどりの/西加奈子」を読んでの感想

こうふく みどりの

 

単行本版

50

文庫本版

628

〜はじめに〜

「こうふく あかの」を読み終えると、最後のあとがきにこの作品がある事を知った。そしてすぐに購入。「こうふく あかの」は真っ赤な表紙が印象的だったが、「こうふく みどりの」はとても美しい緑色であった。

あとがきを読んだ後の購入であったため、この2作品の内容は同じ話(いわゆる続編)ではない事は知っていた。しかし、その中で「つながり」があると作者である西加奈子さんは言う。

わくわくとした気持ちで読み始めた。

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〜こんな人におすすめ〜

  •  女性の方へ
  •  複雑な人間ドラマを見たい方へ

この作品多くの登場人物が女性だ。主人公、主人公の家族、友人など数多くの女性がでてくる。その中で生まれる男女のドロドロとした恋愛事情や、家族の事情。

そして命の話。女性ならではの悩みや女性の強さなど、多くの女性は共感であったり考えることが多い作品なのではないだろうか。

私は共感という目線ではなく、考えさせられることの多い作品であった。

〜おすすめ出来ない部分〜

おすすめできない部分として少し話が複雑で見失ってしまう部分があるかもしれないという部分がある。
そしてもう一点に話が重いという部分がある。

複雑に感じてしまう部分として急激な場面転換と、登場人物の多さという部分にある。
そして話の中で男女関係のドロドロとした話や、命のお話が関わる話であるため、読みごこちとして気持ちの良い話ではないことはお伝えしておく

しかし、それを含めても面白くとても考えさせられる作品である。女性は感情移入しやすい作品となっているのではないだろうか。

〜作品の概要〜

作品名:こうふく みどりの
著者:西加奈子
出版社:小学館
発売日:2008年2月22日
ページ数:258ページ
○読み終えた時間:4時間半

〜大まかな概要〜

兄弟もおらず、父親もいない中学生の女の子が主人公の物語。

このお話では彼女の周囲の変化が主な物語となっている。もちろん彼女自身に起きる出来事もあるが、多くは家族であったり、友人であったりの変化が主な話の内容である。

そしてこの作品にはもう一人主人公がいる。
中学生の主人公とはまた少し時代がズレ少し過去のお話が並行して書かれているのだ。

プロレスが好きな夫婦、その中の妻がもう一人の主人公だ。

とても愛し合っていたふたり。子どもはいなかったが幸せそうに見えた。そんな中、夫の体に異変が。そこから夫の様子に変化してゆく。この変化により、夫婦関係に大きな影響を及ぼしていった。

 〜感想〜

 この作品のここがすごい!

  •  話の展開が読めない
  •  女性の世界や考え、心を赤裸々に書かれた作

「こうふく あかの」では2つの主人公のお話がどのように繋がるのか途中だいたい予想がついたのだが、このお話はどのように繋がるのかワクワクしていた。

この2つの時代の違うお話がなぜ並行して書かれているのか、そんな疑問を持ちながら読んでいた。そして繋がった瞬間の気持ちよさ読書のひとつ大きな楽しみであると思う。是非この作品、もしくは「こうふく あかの」で感じてほしい。

「こうふく あかの」の記事はこちら!⇨自身の凶暴性に気付かされた作品「こうふく あかの/西加奈子」を読んでの感想

そして女性の世界を赤裸々に書かれているという点。

もしかしたらこれは私が男性であるためそう感じているのかもしれない。女性の中であたりまえと思っている世界が私にとっては些細な事で驚く部分であったりするのだ。それだけ男性の目線と女性の目線は違うようだ。

そしてこの作品はじめに女性の登場人物が多いと伝えたが、そのため会話が女性同士で行われるため、言葉がオブラートに包まれていない事が多い。とても直接的な言葉が多いのだ。

そのような性にまつわる言葉が美しく表現された作品ではなく、女性間で直接的に話される「性」の部分などを赤裸々に語られた作品でもあるように思えた。

これも一つ女性にとっては感情移入しやすい部分となっているのではないだろうかと思った。

 印象に残った言葉

「海は、女やと思います」

そのあとに、こう続く。

すっかり乾ききってるはずやのに、

じくじくと湿っぽくて、

まわりの音を、全部とってまう。

何か頭の中にこびりつくこの言葉。正直なところ、なぜ海が女なのかあまり分かっていない。言葉の強さによって私の印象に残ったという方が正しいかもしれない。

女性であればこの言葉の言っている意図がすぐに理解できるのだろうか?とても気になる。

もう一つ

ポロポロ、涙を流すみたいに喋った

この言葉も印象に残った言葉だ。とても詩的で美しい素敵な言葉であった。

 考えさせられた事

この作品の本質はなんなのだろうととても考えさせられた。

「赤」と「緑」このふたつの繋がりは「道」と西加奈子さんは最後の
『「こうふく みどりの」「こうふく あかの」について』
で語っている。それは読んでゆくうちにその言葉の意図は理解できた。

しかし、この作品単体で読んだとき何がこの作品の本質なのか、読み終えたあとすごく考えていた。

2人の主人公の話が並行して書かれているという点がまず他の作品と違う事であろう。それは、2人の道が記されていると解釈した上で、この2人の道が交わる部分を私はワクワクして読んでいた。

しかし、この作品を読んでゆく上で引っ張られるのは、中学生の主人公の周辺で起こる変化であると思う。そこで感じることとしては、女性の強さや登場人物の好きと言う感情への欲深さ、浅はかさなど多くの感情の面であった。

私がこのような部分を考える事が好きなだけかもしれないが、そこに私の意識は引っ張られていった

そのためこの作品の本質、本筋を見失ってしまっているのかもしれない。しかし、これもまたひとつの読書の面白さではあると思う。人それぞれ、その時の自分状況や気持ちによって、作品の感じ方が違うのだ。

〜最後に〜

とても興味深い話の内容であった。

「赤」とは違い「緑」は女性の方が感情移入しやすい作品なのではないかと思った。そのため私は感情移入してというよりは男の立場でどう考えるかという「考えさせられる作品」であった。

この作品を女性の方に読んでいただき感想を教えていただきたい。きっと全く違うものの見方になるのではないかと感じている。

読んだ方は感想を私に教えてください。お願いします!