ファンタジー

「幻想郵便局/堀川アサコ」を読んでの感想

幻想郵便局/堀川アサコ

 

〜はじめに〜

生きる意味について考えたことはあるでしょうか?
このお話はとても優しくそして、暖かく時にはドキドキして「生きる意味」ということについて教えてくれているように思います。

幻想郵便局という素敵な作品名と、素敵な表紙が目に入り、飛行機で読もうと思い購入した作品です。

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〜こんな人におすすめ〜

  • 「生きる意味」に囚われ悩み続けている人
  •  なりたいものが分からない。そんな人。

この「生きる意味」というのは著者である”堀川アサコ”さんが、考え続けてきた中で一区切りとしてこの「幻想郵便局」ができたと、あとがきにて伝えている。

堀川アサコさんのこの作品に最も込められた想いは、

死んだ人は、消えてしまうのではない」

という想いであった。

そしてこの作品の主人公は「なりたいもの」が分からない。という状態で話は始まってゆく。そんな中で最後には彼女にもはっきりとしたやりたい事が見つかっていた。どのような過程で彼女が変化したのか。見どころである。

〜作品の概要〜

作品名:幻想郵便局
著者:堀川アサコ
出版社:講談社文庫
発売日:2013年1月16日
ページ数:296ページ(表示ページ)

 ・著者について

●堀川アサコ(1964年7月20日)
日本の小説家。青森県青森市出身、同市在住。(引用:wikipedia)

この作品をきっかけに幻想シリーズは、6作品書かれている。経歴としては、2006年に闇鏡にて日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞している、。これがきっかけとなり小説家へとデビューした。

大まかな概要

就職活動がうまくいかない主人公の「アズサ」。

親に「なりたいものになればいい」と言われたが「なりたいもの」が分からない。そんな中ある郵便局からアルバイトの採用があった。これは履歴書に記入した「物探し」という部分が採用理由にあった。郵便局へ行くと、不思議な体験が「アズサ」を待っている。

そこから多くの人の「生と死」に触れてゆく「アズサ」。彼女になりたいもの、守りたいとのは見つかるのか?

目次

  1. 山のてっぺんの郵便局
  2. 待っていたのですよ
  3. 登天郵便局のお仕事
  4. 心霊スポットとか、心霊現象とか
  5. 木簡が見つかると
  6. 登天郵便局VS.狗山比売
  7. まだまだ
  8. エピローグ

とても分かりやすく、ストレートな目次であった。

分かりやすい目次は場面転換ごとに次のテーマが書かれているため、読んでいて今どんな場面だったかや、どのような事を伝えたい章なのかがはっきりしている。
読書をあまりしないという方でも挫折せずに読めるのではないだろうか。

 感想

 この作品のここがすごい!

「生と死」というテーマがファンタジーとして暖かく綴られている

全体を通して何度もお伝えしている通り、登場人物の皆が、優しさと暖かさに溢れている作品であった。

「生と死」がテーマの小説となるとすごく重く、読んでいくのが億劫になるものも少なくないと思う。特に私なんかは、私生活が引っ張られるほど、気持ちが持っていかれがちな為、そのような作品を読むタイミングには気をつけている。

しかし、この作品はきっと本が好きであれば全年齢楽しくいつでも読めるのではないかと思う。この作品は幽霊でさえ暖かい。そのような世界観もこの本の大きな魅力である。

 印象に残った言葉

「近しい人が亡くなるたびに、世の無常を感じるわねぇ、みんなどこへ行くものかしら」

この文章だ。とくに「無常」という言葉がとても印象に残った。

「無常」とは
⇨仏教で、一切のものは、生じたり変化したり滅したりして、常住(=一定のまま)ではないということ。「一観」。人の世がはかないこと。
引用:oxford Languagesの定義

いつまで生きられるのか、何がきっかけで人は命を失うのかなど分からぬものだ。そんな中でも多くの人が基本的に「自分は今すぐ死ぬことはない」と思い生きていることであろう。誰にでも訪れる可能性がある、「死」。それは、神様にその人が選ばれたのか。もともと、そのような運命にあったのか。それとも、自分の責任なのか。「世の無常」という言葉にとても納得した。

 考えさせられた事

この作品のメインテーマである「生きる意味」という部分を特に、最初から最後まで考えさせられたものであった。

あなたは何故生きているのですか?」という質問に即答ができる人はいるのだろうか?
この作品では死を迎えた上で霊として現実世界に残り、一定の人に姿を表す登場人物がいる。本編が終わった後に、作者の後書きが記載されているのだが、そこには「死んだ人は、消えてしまうものではない」という事がオススメにも記載した通り、この作品への著者の想いである。

私自身、霊などのたぐいは「見えない」「感じない」という観点で残念ながら信じていない。さらに死後の「黄泉の世界」というものも信じがたいものであると考えている。

しかし正直な話、死を迎えた後の世界というものは「ある」と考えると、死が近づく年齢を迎えた際、死への恐怖心が和らぐという精神的な安定剤のような効果があるように思える。だからこそ、死を迎えなければ分からない世界が「ある」「なし」で考えるよりは「ある」と考えた方が前を向いて歩き続けられるように感じる。「生まれ変わる」という感覚に近いのかもしれない。

それは重要なことであり、人の救いになっているものであると私は思っている。

この考えさせられた事に記載した内容は、特に反対意見の方を批判しているという内容ではない。この黄泉の世界という考えがどこから生まれ、どのような人に信じられているのかという事において知識不足の私は、「今現在こう思っている」ということを記したに過ぎない。この作品を読んだ事で例えば友人が、黄泉の世界や霊がいるという話を私にしてきたとしても、興味津々でその話を聞いてしまえるようになったと思っている。ひとつの進歩を感じ、考えさせられた内容であった

 最後に

全てを読んだ上で最初はとても暖かいファンタジーな世界観に入り込み読み入った。

しかし、後半にくるとミステリー小説を読んでいるような感覚にもなった作品であった。なぜそう思ったのか考えると、中盤に描かれた霊の友人や郵便局での出会い関係の物語が多く、主人公の物語が進んでいく訳ではなかった。しかし、そこが後半へ繋がる伏線があった。後半に行くにつれて、ここに繋がっているんだなと理解ができた。また、最後の問題が霊の友人の事件を解決するというお話の内容であった為、ミステリー小説の要素を強く感じたのであると思った。

 暖かく癒されるが、急にドキドキし考えさせられる事もある面白い作品であった。